FM三重「ウィークエンドカフェ」2013年1月5日放送

今年最初のお客様は、『NPO法人 ひのきの会』の施設長、吉田直文さん。
元気あふれる言葉からスタートです。

『NPO法人ひのきの会』は、紀北町海山区にあります。
障がいを持った方の作業施設で、ゴム製品の加工や、権兵衛の里の日本庭園のお掃除などが主なお仕事。
また畑を借りて、まこもだけや夏みかんも作っているんですよ。

121227_185649

■「自分たちでできる仕事」を、地域のみなさんに理解してもらえるように

『ひのきの会』の収入となっているのは、ゴム製品の加工などの委託作業。
しかし震災の影響があったり、今している庭園清掃も、「来年契約しませんよ」と言われれば、それだけになってしまいます。
なので、何とか自分たちで幅広く出来る事を確立していかないと・・・と考えています。

作業する人のメインは職員ではなく障がいを持った方、全員。
一部の障がい者さんだけではなく、ウチに通ってくる利用者さんが、全員でできる作業を考えて開拓していかないと。
例えば、新しく何か作業委託を受けようとなった時にまず考えるのは、利用者さんたちができるかどうか。
どの利用者さんができるか・・・というのを考えた上で、仕事をお願いするんです。

最近では、仕事に関して、声をかけていただけるようになってきました。
中には職員だけしかできないような状態で、断らざるを得ないものもあるし、これはと思うのがあり、新しく作業を組み込んだりしたり・・・。

常に利用者さんのことを考え、その時に、その人に合った作業を選ぶ必要があるんです。
状態によっては、今日は良くても次の日がどうなっているか・・・フタを開けないとわからない部分がありますから。
個人個人でも状態が違いますので、顔色だったり顔つきだったり・・・そういうのを見た上で判断していきたいと思います。

今のところ、納期のある仕事はゴム製品の加工だけ。
他は委託作業ということで、自分たちのペースでできるように、こちらからも条件提示をさせていただいくこともあります。
すると先方から「それじゃちょっと無理ですね」と言われることもあり、まだまだ障がいに対する理解が足りないのでは・・・と思いますね。
その部分をもっと理解してもらうよう、自分たちが努力することでクリアする・・・というのが課題です。

ゆくゆくは、良い意味で、ウチのような作業所がなくなってくべきなのかな、とは思います。
入院されて戻ってきた方が同じ職場に復帰できたり。
受け入れ態勢が整っていないために、ウチのような作業所が必要になってくるわけですからね。
そういったところがなくても、また一般就労に戻れるのが一番良いんじゃないかなあ、と。
それが、理想の社会です。


1-5-3

■利用者さんが明るくなったと言われると嬉しい!

『ひのきの会』に通所する利用者さんが、家でも明るくなり、前向きになったというのを、時々お聞きします。
周期的に状態が悪くなっていたのが、悪くならずに、今、生活リズムができて過ごせるようになった・・・そういう声を聞くと良かったとホッとします。

まずは生活リズムを正すこと。
これは精神の方の人に特に言えることなんですが、夜に眠らないと、テンションが上がりっぱなしというか、覚醒のホルモンが分泌され、夜通しずっと起きていて、結局、身体が限界を突破してしまう。
そうなると神経が研ぎ澄まされているので、聞こえていない声が聞こえたりしてしまうんですね。
メカニズムとしてはそうなんですけど、本人は聞こえているので、こっちがいくら、聞こえていないよ、と言っても無駄です。
そういう感じで長いこと入退院を繰り返していたけど、『ひのきの会』に通うようになってから、ここ何年も入院せずに通えている状態の方もいます。

本人さんから「落ち着いた、今、ひのきの会に通っているから、落ち着いていられる」、ご家族の方からも「おかげさまで落ち着いたので、これからも通わせて下さい」と言っていただけると、今までやってきて良かったな、という喜びがあります。


1-5-4

■子どもたちから元気をもらう!

僕は高校・大学と器械体操の選手だったこともあり、『ひのきの会』の活動の他、尾鷲で体操教室の指導者としても頑張っています。
体操教室の名前は『なないろ体操クラブ』。
子どもたちの可能性はいろいろな色に輝くという意味を込めてつけました。

子どもたちを指導すると言いつつ、逆に子どもから元気をもらっていますね。
風邪気味で練習に行ったはずが、終わる頃にはすっきり元気になっていたりとか。
一つの技ができた時の子どもたちの顔を見るだけで救われるというか・・・。

最近の子どもの運動神経のレベルが下がっているというのは、正直、僕も感じます。
小学校に上がるか上がらないかの子たちが、ガチガチに体が硬かったりするんですよ。
自分たちが子どもの頃と比べて差というか・・・そのため余計に、ケガをさせないように気をつけています。
そんな中でも、体操に興味を持って来てくれる子どもたちがいるのは嬉しいですしね。
だからまず、柔軟性などの重要な基本だけはちゃんと教えたいのですが、基本が一番楽しくない(笑)
練習のたびに、毎日コツコツ同じ事をしないといけませんからね。
そのため、ボールを使ったり、アスレチックで跳び箱を使ってみたり・・・・全身運動をさせるためにいろいろ工夫しています。
あの手この手でやらないと、子どもは正直なので、すぐに飽きてしまうし、それが顔に出る。
大人は自分のためにであったり空気を読んだりしますが、子どもは読まない。
「またこれ?えらいやん」とか、平気で言う。
子どもは正直ですから(笑)
ただし一般の子はそうでも、選手コースの子はわかっているので、ちゃんと「ハイ」と返事しますよ。


1-5-5

■体操を学び、またそれを生かして欲しい!

技ができるようになるのは、本当に一つのきっかけ。
その日の体調なのか気分なのか・・・ドンと一回できてしまえば、もうそこからは続けてできるようになっていったり。
逆に、今まで何でできていなかったの?と聞きたくらいです。
子どもたちを見ていると、何かのきっかけがあればいくらでも変われるのかな、と思ったりします。
また、それを早くつかめる子と、運動が苦手でマイペースでいく子がいて・・・やっぱり人それぞれですね。
しかしそうなるとだんだん、運動神経が良く上達の早い子と、一生懸命やっていてもなかなか上達しない子の気持ちの差が出てきてしまい、「体操をやめる」という子も出てきます。
それから、体操は個人競技なので、サッカーや野球などの団体競技へ行ってしまう子もいるんだろうなとも思っています。
けれど身体作りの方法として体操をやっていると、大きくなってから別の競技にいっても伸び率が高いと言われているんですよ。
柔軟や筋力など、いきなり野球を始めた子よりも、体操を経験してからのほうが伸びたと。
直接ではないけれど、それはそれでウチが役に立っているのでいいかなと。
体操は基礎が大事ですから。

このまま体操の選手コースでやっていって欲しいという気持ちもありますけど、自分のやりたいことを見つけてもらって、それに体操が影響していれば良いな、と。
体操なんてしなければ良かった、とだけは思われないように。

選手コースの子が卒業して、かつての自分のように、今度は先生として戻ってきてくれたりしたら、嬉しいですね。